川満由希夫 vol.10  「心で見る世界」 




セッションも終わり、これまでにない充実感の中にいました。

前里には、これまでで一番よかった。

本当に人の為に話した瞬間だったと言われました。

それも素直に嬉しかった。

そして、僕は少し興奮気味でもありました。

それは、伝えるということの素晴らしさからきているものと、

もうひとつ、「素の状態」でも大丈夫だった。

という新鮮な感覚からきているのものでした。

以前のようではなく、特に何も考えずに話し、

ありのままを伝えただけでこんなに伝わるものなんだと。

それでいいのなら、なんて簡単なんだろう、

という思いが心の中に芽生えていました。



その日は友達と会うことになりました。

僕ら2人の同級生です。

前里と僕がそうであるのと同じく、

幼稚園から一緒の同級生です。

そして最近よく行っているという居酒屋さんに向かいました。

その途中で前里が面白い話をしてくれました。



これからいろんなことが変わってくるはずだよ。

前里が言いました。

その中のひとつとして

「この世界がとても綺麗に見え始める」

とのこと。

なんだか不思議な話でとても興味深く聞きました。


価値満タンや、この世界に遊びに来ている。

という本質を本当に知ると、

この世界を自分が創っているということがよく分かり始める。

するとこの世界の見え方に「透明感」が入ってくる。

重みがなくなり、少し白みがかった半透明のように見える。

キラキラして見える。

とにかく軽く見えるようになる。



知るとそんな不思議体験もできるんだと、

僕はワクワクして聞いていました。

でもその時はよく分かりませんでした。



ここからは急に時間軸が変わり最近の話になります。

先々週の土曜日です。

僕はテスト対策で一真君と教室にいました。

交代で昼食をとるために外へ出て

普段ならバイクで移動するのですが、

良い天気だったので歩くことにしました。

とても心地よくて、ボーっとしながら歩いていました。

空を見上げたり、木々を眺めたり。

豊かな時間だなぁなどと思いながら歩いている時、


それに気づく瞬間がきました。


なんだか今日は眩しいな、と思ってはいたのです。

白が映えるというか、発光しているように見えるのです。

空もよくよく見てみると、やたらと青くて雲がくっきり浮き上がっている。

空と、木々や建物とのコントラストに、

なんとも表現しきれないくっきり感があります。

全体的に靄がかかっているような白い感覚で、

初めは目をこすったりしました。

おもちゃまでとはいかないが、

建物が薄い軽い素材で作られているように思えたのです。


そして前里が言っていたのはこのことか!


と気づいたのです。

とても新鮮な、とても面白い感覚です。


そしてその時思い出したことがあります。

実は約2年前にも同じ体験をしています。


雨上がりにバイクで走っていた時。

周りの景色に違和感を感じて、

ゆっくり走らせながらじっくり眺めたことがあるのです。

そしてバイクを止めて周りをしばらく眺めていました。

その時僕は、本当に言葉としてこう頭の中でつぶやきました。


「この世界って綺麗だな」


今はその理由がわかりますが、

あの時はさほど何も考えずにバイクを走らせ

その後はなんとなく忘れていました。

おそらく、ワークショップなどで聞いた情報が、

僕の意識をそこに近づけていたのでしょう。

あの頃はそのまま忘れてしまう程度のことでしたが、

何事も知ることで価値が出てくるものです。

そしてこれにまつわる体験をもうひとつ。

また時間軸が変わります。


先月、東京オフィスでのこと。

朝起きて僕はすぐにトイレに入りました。

そしてなんとなくトイレの壁を見た時、

壁の左側が歪んだのです。

壁が波打つように揺れていて、ぐにゃぐにゃに見えました。

空間に穴が開いているという表現が的確です。

ある一部分だけでしたが、はっきりそう見えました。

なんか変だなと思い、目をこすってもう一度見たら

普通の壁でした。

寝起きだからちょっと変な風に見えたんだな、

という程度に終わらせていました。


しかし、翌日の大学講義の中で、

前里がみなさんに話した内容に、

思わず声を上げてしまいました。


それは、心を感じるというセッションをした後のこと、

しばらく目を閉じていたみなさんに、

外を見るようにと前里が言いました。

建物がどう見えるのか。

それは、先ほど書いたように、本質を知れば知るほど

この世界が柔らかく見えるという体験をみなさんにしてもらう為でした。

みなさんのいろんな感じ方があり、とても面白いセッションでした。


そしてそのとき前里が

「これをどんどん知っていくと、空間が歪んで見えたりしますよ」

と言いました。


まさに自分がした体験はこれだったんだと瞬間でわかり

思わず声を上げてしまったのです。


そしてあとで前里にこの話をしました。


そしたら前里が

そういう風に見ようと意図すれば、

いつでもそう見える。

この壁だって透き通って見えるよ。

「目ではなく心で見るんだけどね」

そう言いました。

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