川満由希夫 vol.4  「2回目のバースデー」 


もう日付は変わっていました。

そして後日、僕のお気に入りのノートの最後のページには

「10月19日、ゆきぃバースデー」と書かれることになります。

実際は4月です。



ある瞬間とは、こういう流れから訪れました。


今思えば前里は徐々に言葉を変えていたように思うが、

あの時の僕は、急に話が変わったという印象でした。


いつの間にかこういう話になっていました。


「俺はお前に仕事をしてほしいとは思っていない」


仕事の話から人生の話になり、仕事をするなと…

僕は当たり前に「意味が分からない」と言います。


本当に仕事をするという意味をお前は全然わかっていない。

時間をかけて一生懸命仕事をしてほしいとは思っていない。


そしてこう続けました。


家でゆっくりくつろいでいればいい。

自分の好きな空間を作って、そこでゆっくり音楽を聴いていればいい。

まずはそこから始めればいい。

それが仕事をしていることになるから。




この時点で僕の心はざわついていました。

「何を言っているのだろう…」

だけど心の中で何かが渦巻き始める。


それがどういう意味なのかまったく分からないまま、

僕の心の中で渦巻く物の正体だけは確認できました。

それは「下心」でした。


僕は何度も、本当にそれだけでいいのか

それで仕事していることになるなら楽じゃないか。

そんなことなら今すぐにでもできる。

本当に本当に…  

何度も確認しました。


前里は「それでいい」と言います。


僕は楽して仕事になるならなんてラッキーなんだと思っていました。

とにかく下心満載の状態でその話を納得していきました。


でも、少しずつ話を続けていく前里の言葉の一つ一つに

今度は下心以外のものが引っ張り出されてくる感覚がありました。

今思えば、その下心は最初の扉の鍵のようなものだったかもしれない。

もしくは固く錆びついている鍵を溶かす薬品のようなものというか…


とにかくそれをきっかけに僕は、衝撃的な体験することになりました。


まずは、さっきまであったはずの重い固い空気はまるで無くなっています。

心の中にあった粘り気の強い鉛のような感覚が無くなっています。


そして前里の言葉に反応し、それが加速的に拡大していきます。

前里 「これが幸せという状態だけどわかる?」

川満 「・・・」

前里 「この状態で何か心配事は?」

川満 「ない・・・」

前里 「自分が何でもできる存在だということがわかる?」

川満 「わかる・・・ でもちょっと待って、これって何?」

   「今まで1度も味わったことのない感覚過ぎてよくわからない」

前里 「これが当たり前なんだよ」

   「自分がどれだけ固かったか今ならわかるでしょ?」

川満 「はっきりわかる」
   
   「それも胸のあたりがごっそり無くなった感じがする」

   (この時僕はずっと胸の上の喉に近い場所を押さえています)

前里 「あったかいでしょ?」

川満 「熱いくらい。」

前里 「これが普通の状態。俺は常にその状態だよ。どう?幸せじゃない?」

川満 「信じられないくらい幸せ・・・」

前里 「今だったら何でもできるんじゃない?」

川満 「完全にできる。それも不安も何もない。ただただ楽しみというだけ。」

前里 「この状態がずっと言っている”価値満タン”という状態」

   「正確には”価値満タンを知っている状態”だよ。凄いでしょ?」

川満 「凄すぎてどう言ったらいいかわからない」

前里 「ずっとこれを伝えてたんだよ」

   「でも全然聞かないから"やっと伝わったか"って感じだよ」

   「俺がみんなにずっと伝えているのはこのこと」

   「この状態になってもらいたいから伝えている」

川満 「やっとわかった。初めて頭じゃなく心でわかった。」

前里 「どう?たくさんの人に伝えたくて伝えたくてしょうがなくならない?」

川満 「なる! でもこれってどうやって伝えれば・・・」

前里 「簡単ではないよ。でも俺はこれをとにかくみんなに伝えたい」

   「その強い思いさえあれば絶対に伝わるよ」



この時すでに深夜2時頃だったと思います。

前里は続けて、「これが仕事をしている状態だ」と言います。

doよりもbeとはこのことだと。

目先の何かを「する」のではなく、

価値満タンを知っている状態で「在る」ことのほうが大事。

なぜなら、その状態で在ればそれだけで人の為になるから。

溢れ出たものが人を幸せにするということはそういうこと。

ただそれだけで人の為になる、

そして人の為に生きている人は自然と応援される。

だから仕事もうまくいくし、

何もしなくても人が集まってきてくれる。

それは価値満タンの匂いがするから。

心がそれを知っているから、それに触れたくてみんな集まる。

そしてみんなに用意してもらったその場所で、

最高の物をみんなに届けることができる。

それをただ楽しみながら繰り返しているだけ。

だから仕事とは何かをすることではなく、

ゆったり豊かな時間を過ごしたり、素敵な空間に身を置いて

価値満タンを感じていることが仕事だと言ったんだよ。



それを聞きながら


「この世界はなんて素晴らしいのだろう!」


僕の体中にその思いが満ち溢れていました。


そしてそのすぐ後に、僕はある記憶を思い出しました。



関連記事