川満由希夫 vol.6  「出産、遊びに来た瞬間」 





予想通り夜はほとんど寝れませんでした。

夜と言ってもほぼ朝のような時間でしたが。


興奮していたからというわけではないです。

SANが来たからでもないですが。

でも、もしかしたらそうだったのかもしれない。

僕がどんな夜を過ごしたのか。


実際は寝ました。

でも、必ず起きてしまうのです。

腹の奥底から胸のあたりにかけて、

今まで感じたことのないエネルギーのようなものが

何度も何度も湧き上がってくるのです。

その衝撃に驚いて目を覚ます。

そしてまた寝る。

またエネルギー… の繰り返しで、結局まともには寝れませんでした。

その正体がなんだったのかは未だにわかりませんが、

おそらく自分が元々持っているものを

ただ体感として感じていたのでしょう。

それほどまでにパワフルで価値満タンだということを。



午前3時頃に眠りにつこうとした僕は、

午前6時にはそれをあきらめてパソコンの前に座っていました。


そこでまた不思議な感覚がありました。

全然疲れていないのです。眠くない。

たった3時間しか寝ていないのに、というよりまともに3時間も寝ていないのに。

とにかく気分爽快でした。

そしてゆったりと、クラシックを流しながらコーヒーを飲んでいました。

そしてあることに気づきます。


変な話ですが、僕には変な癖がありました。

何もしていなくても、気づいたら左肩を首に近づけるように上げている。

という癖です。

いつからそうなったのかはわからないですが、とにかく常にその状態。

勝手に骨格のゆがみが原因なんだと思っていました。

でも、ふと気づいたらそれをやっていないのです。


「肩が下がっている」


他の人からしたらそれがなんなんだという話かもしれませんが、

僕はびっくりしました。

肩が下がっているんです。

単純に楽だと思いました。

そしてそれは力が入っていたからなんだと気づきました。

ずっと力を入れたまま生きていたんだと気づきました。


体調が変わるということがすべての人に当てはまるとは思いませんが、

仕組みとしてはありえます。

大きなシフトをしたのだから。


「大きなシフト」という表現が的確だとは思いんませんが、

その方が伝えやすいので。



そしてしばらくして前里が起きてきます。


「気分はどう?」


僕は「爽快」と答えます。


この日、前里はある用事で午前中は出かけることになっていました。

気分爽快な僕は、散歩がてら途中まで一緒に行くことにしました。


そして昨夜の話をしながら、2人でゆっくり歩いていました。

前里は、これからたくさん伝えたいことがある、

これからがもっと楽しいんだと話してくれました。


価値満タン、豊かさ、人の為に生きること、その素晴らしさ

歩きながらいろんな話をしていました。

僕は自然にその話を聞きながらうなずいています。

そして前里がこう言いまます。


「俺の言っていることがわかるの?」


珍しく前里が興奮しているように見えました。

そして、もちろんわかるからうなずいていた僕は、「わかる」と答える。


「宇宙人以外でこの話が通じる人に始めて会った」


前里は笑いながら言いました。


そして

"フルトランスに入る時が一番ワクワクする"


確かそのようなことを言っていたのを思い出しました。

それは、自分の言葉が通じる人達に会えるからということでした。



笑いながら話している前里を前にして、僕はなんだか笑えなかった。

実際は笑いましたけど。

それはなぜか。

前里が言っていた言葉をふと思い出したからです。


「この仕事はある意味で孤独でもある」


それは自分の思っていることを全部理解してくれる人が一人もいない。

自分の言葉が通じる人がいないことと同じだという意味でした。

「孤独」という言葉の意味のすべてがそれではないが、

それでもそれを遥かに超越するほどに、

この仕事が好きでこの仕事は素晴らしいんだと言っていました。

そして、それをたくさんの人に伝えて、みんなで普通にこういう話をしたい。

だからずっと活動を続けてきたし、ずっと考えていた大学も開校したんだと。




朝の散歩に話は戻ります。

目的地に着くまで僕らはいろんな話をしていました。

その中で寝れなかった話をしている時に

またある記憶を思い出しました。

思い出したというより、ある夢を観たのです。

とても鮮明な、まるでそこに生きているかのような夢でした。


それは昨夜に思い出したあの記憶の続きでした。





僕は幼い。

小学生くらいの男の子。

でも自分の子供の頃とは姿は全然違う。

でもそれは僕です。

僕はとてもとても高い所にいました。

それがどこなのかはわかりません。

周りは暗くて、他に人がいる様子はない。

そしてその高い所から下を見ていました。

覗き込むように。

その下には真っ青な地球がありました。

そして僕はその地球を見ながら、ワクワクしながらこう思っていました。

「今からあそこに遊びに行くんだ」


そして僕はその高い場所から飛び降ります。

身体が光の筋のようになっていきます。

どんどん降りていきます。

そしてある光景が目に飛び込んでくる。


出産している女性がいます。

顔はよく分からない。

そして、僕はその女性のお腹にスーッと入ります。


僕はお腹の中にいます。

暗いです。

でもお腹の中の感覚はあまり覚えていません。

なぜなら、すぐに僕は狭いトンネルを回転しながら通り始めるからです。

その窮屈間や身体が回転している感覚は鮮明に残っています。

そして明るい世界に出ます。


でも何かが違う。

僕が見ている「明るい世界」は、ある小さな窓から見ているのです。

目です。

文章で表現するのは難しいですが、

僕は小さな身体の中にいます。

まだ身体と「僕」がひとつではないのです。

身体の内側から、小さな二つの窓を通して外の世界を覗いているという状態。

とにかく不思議で、何が起きているのかよく分かりません。

しばらく興味深く外を覗いていました。

人がいたのだけは覚えている。


そして次の瞬間、僕はおっぱいを口にしている。

今思えば、その時はすでに身体と「僕」はひとつになっていたと思います。

そして母乳を飲み始めてしばらくすると

強烈な睡魔が襲ってきます。

記憶がどんどん薄れていく感覚の中で眠りにつきます。


そして目が覚めた時。


今の僕になっていました。

川満由希夫になっていました。




これは記憶です。

すべて思い出しました。



「この制限の世界に遊びに来たんだ」



それを明確に明確にわかった瞬間でした。

そして同時にわかった明確なことは



「みんなもそうなんだ」




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