川満由希夫 vol.5  「ずっと前の記憶」 

ある記憶のお話をする前に、なぜ僕はあの日にあの体験をすることになったのか。

自分なりに検証してみました。


あの日のあの話の始まりは重いものでした。

今までに受けたことがないほどのプレッシャーだったような気がします。

それは前里にプレッシャーを与えられたという意味ではなく(それもあるが…)

心を見るということを強烈にした結果だと感じています。

それを強いプレッシャーのように感じていたのだと。

その過程で僕は、蓋を開け続けていったのだと思います。


そして実は最終段階、あの瞬間を迎える直前の僕は、

どこか投げやりになっていました。

「もうどうにでもなれ」という、どこか諦めにも似た感情でした。

疲れたのかもしれません。

心を隠すことにです。

強いプレッシャーがかかりすぎて、その反動で一気に扉が開いたのかもしれません。

前里がそこまで誘導したのは言うまでもないが、

でもやっぱり最後は自分でしかないということも今ならわかります。

前里がよく使う「気があるかないかだけ」ということだと思います。

自分のことを「嫌だ」と言った僕の中には、

本当に変わりたいという「気」がありました。

もちろん嫌だと思えばいいというわけではないです。

とにかく「気があるかないか」

これが大事だと思います。



でも実際は「よくわからない」というのが本音です。


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あの夜、僕は興奮していました。

自分の心の状態を確認するのに忙しかったです。

「ずっとその状態でいてくれるならそれだけで十分だ」

前里はそう言いました。

もちろん実際は違いますが、それくらい嬉しいと言ってくれました。

そして

「初めて自分以外でそれを知っている”人間”に会った」

と笑いながら言いました。


そして前里がこんな話をしました。

「この制限の世界に遊びに来たということが今ならわかるでしょ?」


その時です。


胸のあたりがぞわぞわ、もぞもぞするような

初めての違和感が一瞬だけ心を支配した後に、

ある記憶が蘇りました。





僕は幼い。

小学生くらいの男の子。

でも自分の子供の頃とは姿は全然違う。

でもそれは僕です。


それは今の僕がその子を「視ている」のではなく、

昨日行った場所を思い出すという感覚でその状況を思い出しました。


僕はとてもとても高い所にいました。

それがどこなのかはわかりません。

周りは暗くて、他に人がいる様子はない。

そしてその高い所から下を見ていました。

覗き込むように。

その下には真っ青な地球がありました。

そして僕はその地球を見ながら、

ワクワクしながらこう思っていました。




「今からあそこに遊びに行くんだ」





そうです。

生まれる前の記憶を思い出したのです。

びっくりしすぎて思わず大きな声で前里に伝えました。

前里は笑っています。

そして今度は、身体に違和感を感じ始める。


そして背中に寒気が走るような感覚と同時に

この身体が「器」であることを、体感として知ったのです。

非物質の自分が、この身体の中に居るんだと体感したのです。

意識と肉体が合致していないような感覚です。

僕は自分の体を触りながら、なんか気持ち悪いと前里に言いました。

そして前里は笑っていました。


そして僕は、最高の体験に胸を躍らせながら

そろそろ寝ることにしました。


「こんな夜に何もないわけないよね、Sanが来たりして 笑」


そう前里に言って僕は、寝室に向かいました。



そしてまた、ある記憶を思い出すのです。