1.記憶のはじまり 【 和田一真の告白 】 

私の名前は和田一真です。名前の由来は、宇宙はワンネスであることを意味して付けられました。一つの真実です。

というわけでもなく、父親が和田一男だからです。「一」だけを残して付けられました。ごく平凡な名前。それでいて、呼びやすい。人は私を「かずまさん」「かずまくん」と呼びます。

最初は「いっしん」と名付けようとしたらしい。しかし、そんな偉そうな名前は付けられないと母親が必死で止めたそうです。

東京・下北沢は下町。三人きょうだいの末っ子長男として生まれました。特に男児を望んでいた父親にとって、念願の出生だったと聞かされました。

生まれたときの記憶はありません。しかし、記憶がはじまったときの記憶があります。

あれは幼稚園生の頃、父方のおじの結婚式に参加したとき。そのときふと突然、思ったのです。あっ、今気づいた、ここにいると思ったのです。

突然、自分がそこに存在しているという認識をしました。認識が誕生した瞬間です。自分の存在を認識し、それから意識は芽生えました。

行動が自覚的になりました。

その結婚式会場にて、そばにいた母親に「ねぇ、なんか分かったよ」「急に、ここにいるのが分かるようになったよ」と言いました。すると母親は、「そう、よかったわね」と優しく笑ってくれました。いつも優しい母親でした。

そのときに初めて写真を撮影されました。微笑んだその写真は、いまだに両親の家に飾られています。

右目の横に傷がありました。前日に付けた傷でした。大泣きだったそうですが、小さな勲章のようでもありました。

同じ会場に従兄弟がいました。ですが子どもだと思って見ていたわけではありません。私も子どもでした。

彼はトイレに入って出てくると駆け足で、そのまま走り回っていました。ふと下に目をやると、あるものがぶら下がっていました。ズボンは脱いだままだったのです。

そのとき、不思議に思いました。遊びにはそういう方法もあるのかと、妙に納得したのです。

私は3歳、急に人生ははじまった気がしました。そしてあの日から、記憶は長く続いています。
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