『大学生活での成果』  小久保 顕太さん 

前里光秀大学






とにかく浴びている。



前里光秀大学の講義で聞いた膨大な情報を今はまだ、
整理することもままならない。

「あなたに起こった変化は何か?」と聞かれたら、
講義内容を「聞いた」ということだけかもしれない。



自分では何が変わったかはよく分からない。



でも、ひとつ「変わった」と言えること。

それは、自分の行動範囲が広がったということ。



これまで行ったことのなかった場所に、
毎月のように行くようになっていた。

例えば、前里光秀大学の神大クラス
が開かれる神戸へ。



それが何を意味するのか。



行動範囲が広がったということは、
心の領域が広がったということであり、
思考の幅が広がったということ。

1年前の自分は、
今、ここに立っていることなんて考えてもいなかった。

そういう場所が増えていることに気付く。



この場に、自分の言葉で何かを記すことを
どこまで考えていただろうか。

大学で共に学ぶ仲間達とこんな風に笑っている瞬間を
どこまでイメージしていただろうか。



足繁く通った神大クラスの講義会場は、
マンションの上層階。

その窓から見た青い海を思う時、
ひとつのストーリーが広がる。





溺れていた。

もがいていた。

現実という海の中で。





その波の力に翻弄されて、流されつつも、
「生きる」意思だけは忘れることはなかった。

気が付いたら浜辺に横たわっていた。

びしょ濡れの重い体を引きずりながら、
渇いた喉と呆れるほどの空腹感を抱え、
覚束ない足取りで砂を踏む。



どこかで人の声がする。

その楽しげな笑い声に
引き寄せられるように、足を進めた。



やがて、たくさんの人で賑わう港を見つけた。





「前里光秀研究所」という港。





その傍で過ごす内に、
そこに集う人々の優しさや愛情に触れ、
満ち足りた時間を過ごしていた、

はずだった。

だが、いつの日にか、
目の前に広がる青い海を見ながら、

その海の向こうにある何かを見てみたい
と思う自分がいた。

泳ぎ方もままならないのに。



港には、船出を待つ豪華客船もあれば
クルーザーもある。

モーターボートや手こぎのボートもある。

スワンボートも!





そして、すぐそばには
「前里光秀大学」がある。





思い思いの船に乗り、
それぞれの航路を描く人々が集う場所。

大学は特別何かをしてくれるわけではない。

ただ、伝えてくれる。



船乗りとしての気概も、
自分がどこへ向かうのかという航路の取り方も、
自分の今いる場所を知るための羅針盤も、
心という帆の立て方も、他力という風との付き合い方も、
碇を下ろすタイミングやチームワークも、
リーダーシップという宝石も、
それぞれの船の意匠や、海に投げ出されても溺れない方法も。



その他にも、航海に出るのに必要なありとあらゆること、
その全てを伝えてくれる。

でも、伝えてくれるだけ。

それを掴み、実践するかは
こちらの生き方次第。



自分を通して他人を見つめ、他人を通して自分を見つめ、
深い思考と深い呼吸の末に、

見えなかったもの、感じられなかったもの
が分かるようになった。

圧倒的に分かることが増えた。

その一方で、超絶的に分からないものも増えた。





みんなの力を借りて
創り上げられた船の上で僕は思う。

この船はどこへも行ける。

地の底までも宇宙までも。



船長は自分であっても、
乗組員は一人じゃない。

仲間がいる。

一方で、僕もまた、
誰かの船の乗組員でもある。



そして、みんなまとめて、
大きな大きな船にも乗っている。



静かな水平線へみんなの船が進んでいく。

とてつもなく楽しい航海が始まる。



これからの僕の航海日誌は
何らかの形でみんなの目に触れていくだろう。

航海に終わりはないし、
学問にも終わりはない。



さあ、船を出そう。

それぞれの海へ。





あなたの船もここにある。





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前里光秀大学 創造学群Ⅰ類 進化生態学系
第3期生 小久保 顕太
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