忘却 

エビングハウスの忘却曲線をご存知ですか?

心理学者のヘルマン・エビングハウスによって導かれた、
人間の脳の「忘れるしくみ」を曲線で表したものです。

それによると、人は覚えたことを20分後にはその42%を忘れ、
1時間後には56%忘れて、1日後には74%を忘れているといいます。
更に1週間後には77%を忘れ、1ヶ月後には79%を忘れます。

まさに、人が忘れる生き物であるということを表していると思います。
人間は忘れることで生きていける動物なのですね。
しかし、忘れたくないものに関しては、その防御作を考えなければいけません。

脳には短気記憶と長期記憶というものがあるようです。
忘れないものは、この長期記憶に振り分けられていると思われます。
自分が覚えていたいものを、どうすればこの長期記憶にしておくことができるのかが
カギになってきます。

1つは、時間をかけて何回も反復学習し、その繰り返しの中で覚えていくという方法です。
それがどういったスキルであれ、1万時間そこにコミットすることができれば、
それはマスターできると言います。継続こそ力なりですね。

2つ目は、強い臨場感の中でそれを学ぶということです。
例えば学校で先生に叱られたり、会社で上司に叱られている状況がそれにあたります。
未来では、叱り屋という職業が存在すると、前里は言っていました。
実は叱る方は、叱られる側よりも、エネルギーの消耗が激しいと言います。
同じミスを繰り返させない為に、叱るという行為が存在するのですね。

また、自分が好きなものや得意なものは、好奇心や情熱といった臨場感の中で学ぶので、
長期記憶として記憶しやすいでしょう。

そして3つ目は、何かを学んだり身につけたりするときに、
明確な志を持つということです。「なぜ今これをやるのか」
その目的意識が明確であれば、その緊張感や集中力の中で聞いたり学んだりするので
時間や回数が少なかったとしても、聞いたことを忘れないでしょう。

この志を持つということは、何をやるにしても、
「その背景にはどのような文化が潜んでいるのか?」という点において、
大変重要な意味をもちます。成果を出す手段としても、
朝活や、運動、食事、睡眠、掃除、勉強のやり方、仕事のやり方、
人間関係の作り方、服装に至るまで、生活習慣から具体的な方法論まで、
様々なものが巷には溢れています。そのどれも有効だと思いますが、
重要なことは、その背景にある志、思想や哲学、教養。
「なぜそれをやるのか」の「なぜ」の部分だと思います。

「なぜそれをやるのか」の問いに対しての明確な答えや、その「なぜ」の数の多さが、
仕入れ元から仕入れるエネルギーの量を決定します!
その目的志向がパワーを握っているのです!
思想や哲学や教養は、他のあらゆるものを包括する上位概念です。

1人1人が、自分の価値観を世の中に問う思想家であり、哲学者であり、経営者です。
忘却の罠にはまらず、繰り返しを脱し、パワーを得るには、
自分の哲学の完成を急がなければいけません。

哲学といっても、堅苦しい思想を長々と述べなければならないわけでありません。
自分がやりたくないことを並べて、こういう状況には陥りたくないから、
危機管理として、今これをがんばる、というのも立派な哲学だと思いますし、
シンプルに、好きだからこれをやる。というのも哲学だと思います。
また、色々なやりたいことがあって、それをやるために実力をつけよう、
とういうのも大義が明確な哲学だと思います。そのプロセスの中で、
「なぜそれをやるのか?」「なぜそれがやりたいのか?」「究極の欲求は?」
と繰り返し問い続ければ、その志は細かさをもち、緻密な計画性へと変貌を遂げるでしょう。

すべての人に、その人独自のゴールがあると、前里は言います。
ゴールの定義とは、「そこに向って歩み続ければ、必ず到達する」です。
遅かれ速かれ、人は自分で設定したゴールに到達することになります。
志が、その旅路をどういうものするのかを決定すると思います。

「なぜ今これをやるのか」の「なぜ」を常に思考しましょう。
この「なぜ」の問いが灯台の灯りとなってくれます。
目的志向の人や、計画性を携えた人は、なぜかいつもパワフルです!
忘却の罠にはかからず、埋もれず、飼い馴らされず、
変化を越え、限界を越え、イメージの外にあるゴールへ向って突き進みましょう!





比嘉公彦